天理大学 生涯教育

天理大学 人間学部 生涯教育専攻 ウェブログです。

遠隔授業で思うこと

みなさん。こんにちは。教員の谷口直子です。

生涯教育専攻では、4月16日・23日とオンラインで新入生オリエンテーションが開かれました。受けてくださったみなさん、いかがでしたか?
新入生のみなさんと画面越しとはいえ、顔を合わせることができて、私はとても安心しました。

私が生まれた1960年代は、高度成長時代の活気には包まれていましたが、現代社会とはくらべものにならない時代でした。みなさんもよくご存じの「となりのトトロ」そのもので、
電話は各家にありませんでしたし、幼稚園バスはネコバスの形(ボンネットバス)をしていました。勘太が大きな自転車を横乗りにして、さつきを追いかけてきましたけれど、男の子はよく勘太のように足が届かなくても、重そうな自転車を横乗りしていました。

新しいもの好きの祖父が、すぐに最新家電を購入するので、電話、洗濯機やテレビは、比較的早くから家にありました。特に洗濯機は、グワングワンと回る本体の横にローラーがついていて、機械で洗ったあと、ローラーで挟んで泡をきります。脱水機などの装置はなかったのです。それでも、子ども心には面白くて、ローラーを回すのは、大好きなお手伝いでした。

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昭和30年代の洗濯機(大阪くらしの今昔館 資料より)

1967年には東京オリンピックの開会式、1969年には、ユーミンの歌「未来は霧の中へ」に出てくるように、朝起きると「人類が月面に降り立った映像」がテレビで流れていて衝撃を受けました。1970年には太陽の塔で有名な日本万国博覧会が大阪で開催されました。万博で「月の石」を見て、あのテレビの中で見たその時の石か!!と感動したものです。
皆さんが持っている携帯電話だって、平野ノラさんが「しもしも~」のギャグで一世を風靡したような肩にかける大きな箱だったのが、今やだれもが持てるスマートフォンになりました。

50年も生きていると、時代の証人になったような気持ちになります。

今回のコロナ禍で、家で仕事ができる。
遠くにいる人と授業で会える。
時代がまた、大きく一歩進んだように感じます。

いま、私は、リモートワークで、往復2時間の通勤時間と身支度にかけていた時間、約3時間を読書の時間として手に入れました。
いま読んでいるのは 安克昌『心の傷を癒すということ』(角川ソフィア文庫2001年)という本です。
私の人生の中で、もっともショッキングであり、原動力となった「阪神淡路大震災(1995年)」。みなさんはまだ生まれていないかもしれません。『心の傷を癒すということ』は、大災害のなかで疲弊する避難者を支えた、ある精神科医の著書です。その頃、大災害のボランティアとして活動していた私にとっては、リアルすぎて少し心が痛い描写もありますが、いま、この本を読まなければいけないという使命感のようなものを感じています。

コロナ禍もまた、災害です。この流行が収束した時には、人々の心も体もボロボロになっているだろうと思います。そんなときに、若くして故人となってしまった安先生がご健在であれば、どんな行動をとられただろう、、、そんな思いで読み進めています。

私たちは、この災害に力を合わせて打ち勝ち、そして災害から学ばなければなりません。

幸せな人生をプロデユースする「生涯教育」の考え方は、禍の立ち直り時に、傷ついた社会や人々に貢献できることでしょう。そんなふうに、大学での学びを受け止めていただけたらと願っています。