天理大学 生涯教育

天理大学 人間学部 生涯教育専攻 ウェブログです。

小さくとも「できること」を

 こんにちは、生涯教育専攻の杉山です。

 大学では、5月からの授業開始に向けて履修登録が始まろうとしています。例年であれば学生の皆さんには直接会って1年間の履修について説明したり、相談を受けたりすることができましたが、今年度は大学ポータルシステムやメール、オンライン・ミーティングなど様々な方法でオリエンテーションを進めています。
 大学に集い、顔を合わせてコミュニケーションをとる。これまでは何気なく、当たり前にできていたことです。そしてこの状況下、この当たり前のことがどれだけかけがえなく、大切な日常であったかを痛感しております。それぞれに不安を抱え、我慢を強いられる年度始めとなりましたが、こんな時だからこそ学生・教職員で力を合わせてこの状況を乗り越えていけたら、そして、この経験も糧にしながらこれからの生涯教育のあり方を一緒に考えていけたらと思っています。

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 さて、本学では、春学期は「遠隔授業」を予定しています。いよいよ授業開始が近づき、私たち大学教員の準備も正念場を迎えています。私などはこの準備を進めながら「あぁ、去年までやっていたあれもできない、これもできなくなるかもしれない...」といったように「できなくなること」ばかりが気になり、ついつい後ろ向きになりがちです。しかし最近、「それだけじゃいけないな」とエンジンをかけ直しています。

 この状況下 では できなくなること

   だけじゃなく、

 この状況下 でも できること

 この状況下 だからこそ できること

   に意識を向ける。

 そんな風に発想を変えることができたのは、学生と始めた小さな、小さな読書会がきっかけです。実は、直接顔を合わせることのできないこんな状況だからと、オンライン・ミーティングのサービスを活用して学生と新書を読む気軽で小さな読書会を始めました。これがやってみると毎回予想以上に議論が弾んで、エキサイティングです。その中でも指摘を受けたのですが、「こんな状況じゃなかったら、授業外でこんな風に専攻の学生と読書会をすることがあっただろうか」と気づきました。

 今、この状況だからこそと読書会でとりあげている新書は『新・大学でなにを学ぶか』(上田紀行編著、岩波ジュニア新書)です。


www.iwanami.co.jp


 「大学ってどんなところ?」「大学ってなにを学べるの?」東京工業大学リベラルアーツ研究教育院に所属する個性豊かな執筆者が、それぞれの立場・経験・思いから大学生活をめぐる問いを読み手に投げかけてくれます。自分たちのこれまでの大学生活を振り返り、これからの大学生活を思い描きながら読み進め、仲間と議論を深めることのできる良書です。

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 地域で子育てを楽しみ、応援する輪を広げる。
 地域に根づいた文化を体験的に学び、世代をこえて共有する。
 地域の若者が主体となって、これからの社会教育・生涯教育を考える。

 いずれも地域をフィールドに準備していた、学生主体のプロジェクトです。学外のたくさんの関係者の皆さんと一緒に進めていこうと、楽しみにしていたプロジェクトでもあります。
 この状況下では取り組めない、実現が難しいこともたくさん出てきました。しかし、だからこそより一層地域の現実に目を向け、この状況下でできること、この状況下だからこそ求められていることを(直接対面できなくとも)学生の皆さんと一緒に考えていく時間を、少しでも大切にしていきたいと考えています。

 たとえ「できること」は小さくとも、生涯教育専攻らしく、社会につながり、仲間と学び合い、仲間と共に挑戦していける1年にしていきましょう。